天安門事件の象徴「戦車男(Tank Man)」は、誰か? |
1989年06月05日に、中国北京(Beijing)の天安門広場(Tiananmen Square)で戦車の隊列の前に一人で立ちはだかった男性は、25年経った今も、平和的な抗議行動と抵抗の象徴とされている。
あれは誰だ!
http://time-az.com/main/detail/45821
その日のまもなく正午だった。
両手に買い物袋を提げた白いシャツ姿の男性は、天安門広場の北側を走る大通りの中央に進み出た。
民主化を夢見た学生たちの姿は、広場からすっかり消えていた。
広場では前日、民主化を求めるデモを軍が武力で鎮圧し、抗議の参加者に多数の死者が出ていた。
通りのずっと先まで何台も連なる戦車や装甲車。男性は先頭の戦車の前に立った。
そしてその戦車が進路をずらして通もうとするたびに、前に歩み出て行く手を阻んだ。
カメラに捉えられた「戦車男(Tank Man)」は、20世紀という時代を決定づける映像の一つとなった。
忘れることのできない強力な映像は、これまで数え切れないほど紹介されてきたが、この人物の正体やその後の運命は今も分からないままである。
その後、銃声が鳴り響く中、男性は戦車によじ登り、兵士の一人と話し込んだ。
そしてまた路上に降り、隊列に退却を命じるような身振りをし、先頭車が速度を上げて通り過ぎようとすると、また立ちはだかった。
中国当局は固く沈黙を守っている。天安門事件の1年後、米国人テレビジャーナリストのバーバラ・ウォルターズ(Barbara Walters)が、当時、中国共産党の総書記だった江沢民(Jiang Zemin)に「戦車男」の写真を見せながら「この若い男性の身に何が起こったかご存知ですか」と質問した。
江沢民はろうばいした様子で、戦車は男性をひいていないと強調した。しかし、死んだとは思っていないと述べただけで、その後の男性の運命について語りはしなかった。